微熱 ア・イ・ス・ル・ヒ・ト・ヘ
to my beloved 1
「私のお父さんチョンでヤクザなんだよ」
成田発バンクーバー行きの機内。シートベルト着用のアナウン
スを聴くカズキ。これから本当に別々の生活が始まる2人。
サキのあの時の言葉が、カズキの脳裏をかすめる。
何でもない事かのごとく、サキの笑顔からこぼれ落ちたその言
葉は、すごく突然で、それでいて無邪気だった。
戸惑ったカズキは、でも平静を装い、当たり前のようにサキに
言う。
「ウチも半分在日だよ。でも韓国語しゃべれないから、’なんち
ゃって’ かもだに」
「そか、2人ともある意味ハーフだに」
「そうとも言える」
「何かカッコイイみたい」
そんな会話も、ごく普通の8月のセミの声に掻き消されて行く
高校受験に失敗したカズキは、叔父の住むカナダへの留学が決
まって居た。
「オレ、カナダに行くんだ」
「そうなんだ」
サキはカズキの全てを知っているかごとく平然と答える。
「ネ、今夜焼肉食べ行こうよ」
「エ〜、でも私お金ないよ」
「2人分ぐらいだったら家から持って来るし」
「何かすでにメッチャ空腹してない?」
「じゃ、カップ麺でも食べとく?」
手をつないで近場のコンビニへ行く2人。
「サキどれにすんの?」
「カズキのスキなの」
「オレ、これ前から食べて見たかったし」
「じゃ、これ私の奢い」
「ラッキー」
サキの家にはたいがい誰も居ない。
to be continued...
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